2008年7月11日金曜日

攻撃―悪の自然誌

この本は素晴らしいですね。
たいていの本は半分ぐらいきいたことのある内容を手を細かくかいてあったり、手をかえ品を変えというかんじですが、銃と馬と病原菌ぐらい、エポックな内容です。

同じ種族で殺しあうのは人間だけだという言葉、きいたことないですか?
人間の浅ましさ、自然の美しさを語る言葉です。

しかし、動物行動学者ローレンツ(ノーベル医学・生理学賞を受賞した動物行動学の祖)が生物の攻撃本能について語ったこの本を読めば、なんだ人間も動物と変わらないじゃないか、と思えてきます。

攻撃本能とは進化の過程で身に付けた知恵であり、それなくしては生き残れなかったわけです。

また、大きな牙をもつ生物には攻撃本能だけでなく、致命的攻撃を抑制する本能も備わっています。
一見平和そうに見える動物のほうが、より残酷な行動をとることができるのです。例えば平和の象徴とされる鳩は、閉ざされた檻の中では、死んだ仲間にすらいじめることを止めません。それは、鳩が逃げることが得意なため、いじめられても自然界では容易に逃げることができ、攻撃を抑制する本能が必要とされず備わっていないためです。

一方、人間はたやすく人を殺すことができるのに、なぜ抑制本能が働かないのか、と考えてしまうかもしれません。
しかし、それは武器を持っての話。
素手で人を殺すことは、とても難しいわけです。
泣いたり、血を噴出したり、許しをこうたりする相手を殴り殺すというのは実に、難しいのです。
しかし、人間というのは武器をもってしまいました。激情に駆られた斧の一振り、銃にいたっては引き金をひくだけで、簡単に相手を殺してしまうことができます。
つまり、長い期間に備わった抑制本能をはるかに超える攻撃力を手にしてしまったのが人間なのです。
本の中では、聖書のカインとアベルの話がでてきますが、はじめて兄弟殺しをしたカインは、その結果に愕然としたであろう、と述べてあります。

また、友情というのは、攻撃本能をもつ動物にしか生じない、とも述べてあります。友情というのは攻撃に対するexcept 例外になるのです。攻撃本能をもたない動物は、博愛、ではなく、単に個を区別する能力に乏しいということです。

好きや嫌いを、引力と斥力と捕らえなおして、一歩引いて自分を分析してみるのも面白いかと思いました

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