2011年1月21日金曜日

PPI(ポリゴンピクチャーズ)にみる工場型戦略1

今日は予告していた「CGプロダクションが生き残る3つの方法」の続き、「工場型プロダクションを目指す」です。

「工場型プロダクション」の例としてPPI、旧ポリゴンピクチャーズを取り上げてみたいと思います。
PPIといえば、トランスフォーマープライムが放送開始しているみたいですね。



Transformers Prime のクレジット
をみてみましょう。
ストーリーの構成・キャラクターデザイン・エディティングは完全に海外ですね。
アニメーション部門にPPIの名前がずらりとならんでいます。

つまり、完全に下請けとして機能しているのです。
ここで、え?下請けといってはいけません。
これは、はっきりいってすごいことです。

まずビジネス的にみて、TVシリーズの下請けになるポジションにはいくつも利点があります。
1大きな金額が一定期間稼げる。
2人材を育て、大量生産のノウハウを吸収蓄積しながら拡大できる。
3元請のノウハウを吸収しつつ、元請になるチャンスをうかがえる。(わかりやすくいうと、オリジナルをつくるということです)

つまり、着々と稼ぎながら、成長し、オリジナルやさらなるハイエンドへの道を狙うという夢までみれるのです。かなりまっとうな戦略です。
IGや京都アニメーションなど、かつての日本のアニメ会社は下請け→元請というように成長していくのが普通でしたし、海外で見れば、下請けの下請けからはじまって技術を吸収しどんどん拡大しているのがDoubleNegativeやPixomondoなどです。


では、実際、PPIはどんな市場にいるのでしょうか?

ここでCGアニメーションだと、ついついPIXARと比較したくなりますが、そことくらべちゃいけません。
ビジネス的に見てここで比較すべきは、「スターウォーズクローンウォーズ」なのです。


この作品は、世界中で放送されるTVアニメシリーズでルーカスフィルムのシンガポール支部で作っている作品です。

この競争を仕事を発注するクライアント側から考えてみましょう。
テレビアニメをつくりたい。→アメリカ国内では採算が厳しい→安くてクオリティが安定していてコントロールしやすいところないだろうか→英語だし、人件費も安く、税金も安い、シンガポールにスタジオをつくろう。
こんな思考回路だと思います。
さて、ほかにもそんなクローンウォーズの状況をみて、うちもあんなスタイルで作りたいと思う制作会社があるわけです。
そこにPPIは名乗りをあげている。そしてTransformersの映像をみると、まあ悪くない。クローンウォーズの7割8割はいっている。ルーカスフィルムにだすコストと比べるとかなりコストパフォーマンスはいいんじゃないか(ここ完全に想像ですが)と。
そういう意味でTransfomers Primeは成功といえるでしょう。
(実際の売り上げやらコストやらは数字を知らないので、利益という意味ではわかりませんが)
フルCGテレビシリーズの下請けをやるならうちだよー!という十分なアピールになったはずです。

しかし、この市場、いいことばかりではありません。
なにしろそんな経緯でやっているので、当然コスト競争が熾烈です。
戦っている相手がシンガポールですから、そもそも基本的な人件費が違います。
シンガポールと日本の平均収入をみてみてください
日本の平均月収314600円に比べてシンガポールは129700円、額面で3倍ちかく、実質手取りでも2倍の差があります。

シンガポールのCGartistの月収が平均よりかなり高いとしても、そもそシンガポールは生活費が安いですから、まあ、そこと戦うわけです。
当然、たくさんの人件費を捻出できません。

しかし人手は必要です。
なにしろ大量のカットをこなさくてはなりません。
さてどうするか?
みなさんだったらどうしますか?

最初に考えられるのは、ピラミッド型の組織を作ることです。
(ここからは企業ごとの戦術なのでPPIさんがそうかどうかはちょっと僕は知りません。知っている方がいたら是非教えてください。)
たくさんのそんなにスキルがないけど、ギャラも低い新人クラスを大量にかかえ、それを少数のベテランがコントロールします。
その結果、
人のモチベーションをあげれる人。会社にノウハウを残せる人。パイプラインを築く人。つまり、最高のスキルを持つ孤高のアーティストよりも、全体のレベルを底上げできる「もりあげ役」
が重視されるわけです。

大量のカットをさばくため、高度に分業化され、各人は取替え可能にし、企業にノウハウを蓄積していく。ノウハウを蓄積するコアメンバーは、常に最新の技術を勉強しています。
まさにCG工場なわけです。

さてそんな工業化されていく会社で、
どうわれわれいちアニメーター、いちアーティスト一個人としてやっていくのか。
どういった人がこの戦略を持つ企業にいくとよいのか。

工業化は必然的に平均化を必要とし、また推し進めていきます。
その決定要素が実はリニアワークフローの目指す世界だと思っています。
リニアワークフローは「わーい、リニアワークフローだとなんだかいい絵がぽんとできるよ!」
というのとはまったく一線を画す、巨大な流れの一端であることを理解する必要があります。
おそろしい。。。本当におそろしいのです。。。。
というわけで、次回はリニアワークフローの説明をしながら「工場化企業でいかにたちふるまうか」についてお話しようと思います。


一回で終わらなかった。。。すいません続きます。

つづきです↓
PPI(ポリゴンピクチャーズ)にみる工場型戦略2


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シンガポールとの賃金の差については、このへんのサイトが参考です。
シンガポールの平均月収と一人当りのGDPについて質問です。
シンガポール人の大卒初任給は2000Sドル前後1Sドル=64円程度
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関連した記事
zentoy: CGプロダクションが生き残る3つの方法


2011年1月19日水曜日

海外のNintendoDSのCM

日本の企業でも海外でCMをうつときはちょっと違うかんじですよね。あれはなんなんでしょうか?車なんて特に日本企業の海外CMはかっこよくて、おんなじCM流せばいいのにと思うことがあります。

マリオ。こんなCGのCMやりたかったなー。マリオと地面の質感がかわいいね。


レイトン教授はイギリスを押しまくってます。


ドラクエ はにたような感じでつまんない

2011年1月17日月曜日

「CGプロダクションが生き残る3つの方法」記事のお礼と続き

「CGプロダクションが生き残る3つの方法」
たくさんの方に、コメントをいただいたり、twitterでとりあげていただいたり、反響をいただけてとてもうれしかったです。ありがとうございます。
白石運送さんに取り上げられた瞬間、見ている方の数が、がくんとあがって、さすが人気ブログは違うなあと思いました。しらいしさん、ありがとうございました。

多くの方がこれからのCG業界について関心を持っていることにとても励まされました。
この記事についてのご意見、ご感想、特に異論反論をお待ちしています。
別に、おれはそうは思わないとか、おまえは間違っているとかでもぜんぜん僕はいいんです。
議論を重ねることで、考えを深めていくことが重要だと思うのです。

次回予告ですが、1、2、3、それぞれの企業がどういった方向をすすめばいいのか、またその結果、CGアニメーター、デザイナー、個人としてはどのようにすすめばいいかを考えてみたいと思います。

まずは、僕としては3が難易度が低く、かなりおすすめだったのですが、あまりみなさんの興味をひいてないようなので、2の工場型を目指す。ということについて議論してみたいと思います。
2の工場型は多くのCGデザイナー・アニメーターに直接降り注いでくる問題だと思います。そんな時代に個人としてどう生きていくか、考えてみたいと思います。

関連した記事
zentoy: CGプロダクションが生き残る3つの方法

2011年1月7日金曜日

龍角散 CM

テレビ見ていると、CMが流れてて、あれ?なんかみたことあるぞ?なんか、おれごのみのデザインだぞ。。
と思ったら自分でやってました。
数年前やったものが、今頃流れてて、自分でも完全に忘れてました。

やったのは龍角散の口内説明映像のデザインです。
説明画像なのにピンクでふわふわしてて、かわいらしいので、自分でも気に入ってます。久しぶりに見たからかも?


中国でも流れているんですねえ。

2011年1月5日水曜日

CGプロダクションが生き残る3つの方法

あけましておめでとうございます。

2010年、けっこう日本のCG業界はいろいろなことがおこった年だと思います。
パチンコ業界にいろんなプロダクションが買収されたり、海外からたくさんの人が帰ってきたり、また海外にいったり、スクウェアが大量に解雇したり、ポリゴンピクチャーズとデジタルフロンティアが大量に人を募集したり。
昨年、転職した人はけっこういるのではないでしょうか?

そこで年始の今、日本のCGプロダクションの方向性について考えてみようと思います。
就職活動をしているCGデザイナーの卵にも参考になるかと思うのでぜひ読んで感想を聞かせてください。

日本国内のCGプロダクションが生き残る方法は、大きくいって三つあると僕は思っています。

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1 コンテンツホルダーになる
2 海外案件をとる大プロダクションになる
3 ディレクターを中心とする小規模プロダクションになる
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です

それぞれコストに関してはこんなかんじです。

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リスクに関してはちょっとかわります。

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それぞれ順を追って説明してみましょう。


1 コンテンツホルダーになる
これはPIXAR、PDI型。ショートアニメーションをつくりながら、長編アニメーションに挑戦する方法。
最終的には、CGアニメーションプロダクションになる。その段階では基本的には頼まれ仕事は受けないようになる。

・難点
面白いストーリーをつくることと、下請けとしていいCGをつくることにはほとんど関係がないため、作品づくりのノウハウを手に入れることが難しい。
また日本国内の長編CGアニメの市場が成熟していないため長編のヒット作品をつくることは難しく、短編はマーケットが存在するが、大きく稼ぐことはまだ難しい。

・利点
あたるとでかい。軌道に乗るともっとでかい。

国内ではカナバングラフィック、MARSAなどがこの路線かもしれない。

2 海外案件をとる
ILMシンガポール、インド企業、などの工場型プロダクションの形態をとりつつ、クオリティと開発力をあげて、ゆくゆくはILM、デジタルドメインを目指すやり方。
実際にダブルネガティブ(英)、スキャンライン(独)などの企業がこの方法で成功しつつある。

・難点
インド・中国という低賃金諸国との価格競争にかたなくてはいけない。人件費を抑えるため、優秀な人材を集めづらい。

・利点
ヨーロッパなどが、後進ながら現実に成功しつつあり、ベンチマーケティング(やり方をみならいとりいれること)がやりやすい。

国内では、ポリゴンピクチャーズが海外からスーパーバイザークラスをひっぱってくることでこの路線をいきつつあるが、円高の今、おそらくほんとに厳しい戦いを強いられていると思う。
この方式は、工場型なので、個の力より企業の総合的な力が求められる。
つまり、ノウハウを蓄積し、「だれでも」「一定の時間で」ある程度のものがつくれるようにしていく。
具体的にはリニアワークフローを取り入れたり、分業制にしたりする。
ノウハウは企業にたまるので続けていけば、必ずいつかものになるはず。
問題はつづけるだけのコストに耐えられるか。

3 ディレクターを中心とする小規模プロダクションになる
社内にディレクター・アートディレクターを持ち、社内CGディレクターとの密接な連携を武器に他社にはまねできない世界観をつくりあげ、CM・ミュージックビデオなどの小規模な仕事をする。ImagenaryForcesなどが参考例。

・難点
海外でもCMの単価は下がっており、ImagenaryForcesですら映画のタイトルアニメーションの仕事も利益があがらないらしく、ビジネス的に厳しい戦いは予想される。

・利点
ローコスト。

国内では、wowがこの方向を進んでいる。
CM業界に携わった経験から、個人的には国内に世界と勝負できるディレクターとハイクラスのジェネラリストは数多くいると思う。問題はディレクター・CGディレクター・デザイナーを含めた優秀なチームをつくれるかどうか。
個人的には辻川さんみたいな人がそうなってほしいです。

といった感じだと思うのですが、
もちろん、これはモデル論なので、実際には、各企業がこの3つが複合するかんじで独自の道をさぐっているところだと思います。
たとえばポリゴンピクチャーズは2路線をとりながら、水面下で1のオリジナルをすすめていると思います。
これからCG業界に就職しようという人、参考にしてみてください。
あ、そうだ!いっとかなきゃいけないことが、僕は映像系なのでゲーム系のCG企業はちょっとわかりません。
また、これ以外に国内のCGプロダクションが生き残る道があれば是非教えていただきたいです。

2011年、どんな年になりますか。
とにかく、今年もよろしくお願いいたします。

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なんとWOWさんが15周年で本をだしてました。かっこいい。