2011年1月5日水曜日

CGプロダクションが生き残る3つの方法

あけましておめでとうございます。

2010年、けっこう日本のCG業界はいろいろなことがおこった年だと思います。
パチンコ業界にいろんなプロダクションが買収されたり、海外からたくさんの人が帰ってきたり、また海外にいったり、スクウェアが大量に解雇したり、ポリゴンピクチャーズとデジタルフロンティアが大量に人を募集したり。
昨年、転職した人はけっこういるのではないでしょうか?

そこで年始の今、日本のCGプロダクションの方向性について考えてみようと思います。
就職活動をしているCGデザイナーの卵にも参考になるかと思うのでぜひ読んで感想を聞かせてください。

日本国内のCGプロダクションが生き残る方法は、大きくいって三つあると僕は思っています。

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1 コンテンツホルダーになる
2 海外案件をとる大プロダクションになる
3 ディレクターを中心とする小規模プロダクションになる
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です

それぞれコストに関してはこんなかんじです。

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リスクに関してはちょっとかわります。

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それぞれ順を追って説明してみましょう。


1 コンテンツホルダーになる
これはPIXAR、PDI型。ショートアニメーションをつくりながら、長編アニメーションに挑戦する方法。
最終的には、CGアニメーションプロダクションになる。その段階では基本的には頼まれ仕事は受けないようになる。

・難点
面白いストーリーをつくることと、下請けとしていいCGをつくることにはほとんど関係がないため、作品づくりのノウハウを手に入れることが難しい。
また日本国内の長編CGアニメの市場が成熟していないため長編のヒット作品をつくることは難しく、短編はマーケットが存在するが、大きく稼ぐことはまだ難しい。

・利点
あたるとでかい。軌道に乗るともっとでかい。

国内ではカナバングラフィック、MARSAなどがこの路線かもしれない。

2 海外案件をとる
ILMシンガポール、インド企業、などの工場型プロダクションの形態をとりつつ、クオリティと開発力をあげて、ゆくゆくはILM、デジタルドメインを目指すやり方。
実際にダブルネガティブ(英)、スキャンライン(独)などの企業がこの方法で成功しつつある。

・難点
インド・中国という低賃金諸国との価格競争にかたなくてはいけない。人件費を抑えるため、優秀な人材を集めづらい。

・利点
ヨーロッパなどが、後進ながら現実に成功しつつあり、ベンチマーケティング(やり方をみならいとりいれること)がやりやすい。

国内では、ポリゴンピクチャーズが海外からスーパーバイザークラスをひっぱってくることでこの路線をいきつつあるが、円高の今、おそらくほんとに厳しい戦いを強いられていると思う。
この方式は、工場型なので、個の力より企業の総合的な力が求められる。
つまり、ノウハウを蓄積し、「だれでも」「一定の時間で」ある程度のものがつくれるようにしていく。
具体的にはリニアワークフローを取り入れたり、分業制にしたりする。
ノウハウは企業にたまるので続けていけば、必ずいつかものになるはず。
問題はつづけるだけのコストに耐えられるか。

3 ディレクターを中心とする小規模プロダクションになる
社内にディレクター・アートディレクターを持ち、社内CGディレクターとの密接な連携を武器に他社にはまねできない世界観をつくりあげ、CM・ミュージックビデオなどの小規模な仕事をする。ImagenaryForcesなどが参考例。

・難点
海外でもCMの単価は下がっており、ImagenaryForcesですら映画のタイトルアニメーションの仕事も利益があがらないらしく、ビジネス的に厳しい戦いは予想される。

・利点
ローコスト。

国内では、wowがこの方向を進んでいる。
CM業界に携わった経験から、個人的には国内に世界と勝負できるディレクターとハイクラスのジェネラリストは数多くいると思う。問題はディレクター・CGディレクター・デザイナーを含めた優秀なチームをつくれるかどうか。
個人的には辻川さんみたいな人がそうなってほしいです。

といった感じだと思うのですが、
もちろん、これはモデル論なので、実際には、各企業がこの3つが複合するかんじで独自の道をさぐっているところだと思います。
たとえばポリゴンピクチャーズは2路線をとりながら、水面下で1のオリジナルをすすめていると思います。
これからCG業界に就職しようという人、参考にしてみてください。
あ、そうだ!いっとかなきゃいけないことが、僕は映像系なのでゲーム系のCG企業はちょっとわかりません。
また、これ以外に国内のCGプロダクションが生き残る道があれば是非教えていただきたいです。

2011年、どんな年になりますか。
とにかく、今年もよろしくお願いいたします。

関連した記事
zentoy: J.J. Abrams' mystery box | Video on TED.com
zentoy: 「CGプロダクションが生き残る3つの方法」記事のお礼と続き
zentoy: PPI(ポリゴンピクチャーズ)にみる工場型戦略1

なんとWOWさんが15周年で本をだしてました。かっこいい。



6 件のコメント:

kawachan さんのコメント...

就職活動中の学生です。
わかり易く整頓された記事で
大変参考になりました!
ありがとうございます!

mo さんのコメント...

すごいよく見てらっしゃるんですね。
私はまだ業界2年目のひよっこですが、先輩方が転職を視野にいれてらっしゃる姿を見ると考えさせられるものがあります。

海外案件に惹かれて移動したものの、日本公開はなく、さらに海外向けの作品を作ってみて自分に合わない(かっこいいと思えない方向だったり)と分かり先を迷ってらっしゃる方や、作品は関係なく、将来海外進出の為の経験として海外案件にかかわれる会社に行った方。。。


企業はもとより、業界自体が模索、まだまだ成長途中なんですね。

yu さんのコメント...

kawachanさん
コメントありがとうございます。ぜひ就職先の企業分析にいかしてみてください。自分にあった企業に入れるといいですね。

moさん
コメントありがとうございます。
あれ?もしかして有名な某社でしょうか・・・

日本のCG業界は今、淘汰の時代にあると僕は思っています。アメリカには完全に遅れをとり、ヨーロッパには先を越され、これから韓国、中国、シンガポールなどのアジア勢が低賃金・潜在市場を武器に猛攻をしかけてきています。
大きな市場をもつ日本国内の需要で完結していた、日本のCG企業は、CM不況、ゲーム不況、人材流出、によって海外に目を向けざるをえない状況にあります。ここでの対応で今後、各企業の道が大きく変わっていくかもしれません。

どんな業界にもいえることかもしれませんが、技術職にあるかぎり、世界の技術者との競争は避けられない運命にあります。どうせなら、世界で戦える力をみにつけたいですね。
海外案件にかかわっているとのこと、実に素敵ですね。僕も個人的に、海外を目指しているような志の高い人と知り合いになるのはとても刺激になります。2.の海外工場型を目指す企業も、そういった形で人材を惹きつけられるんですね。勉強になります。

tai さんのコメント...

こんにちわ。
大変興味深いです。

僕も最近、この先を生き残るにはどうしたら良いものかを常々考えています。
今の僕の意見もyuさんとほぼ一緒です。

国内のCGプロダクションは大規模から小規模までほぼ関係なく、9割以上の会社が下請けを中心とした会社です。
こうなると価格競争という意味で中国インドを中心としたアジアには今後勝てません。
今はまだ国内に回ってきている仕事も、いずれ海外に流れるでしょうし、現在国内CGプロダクションの太い柱であるゲームムービーも、昨今の実機ムービーの出来を見ると、プリレンダーがいつまで使われるのか甚だ疑問です。

となるとやはりyuさんが仰るように、コンテンツホルダーになるなど、価格競争にまきこまれず自分の立ち位置を確保できるような力を持つ必要が出てくると思います。
これはプロダクションに限らず個人としても、です。
個人として、職人的なアーティストを目指す場合、他の人がちょろっとやっただけでは到底到達できないような圧倒的なクオリティの仕事が出来るようにならないとだめなんだと思っています。
これが出来れば、国や会社のあれこれといったものに巻き込まれずに、今後世界がどういうことになったとしても、CGの仕事がある限りはなんとか食っていけると思っています。

誰かがやって出来ちゃうようなものではない、という点で上記の2つは共通なかなと思っています。

世界でトップクラスのCGをつくっていたというわれる90年代以前、さらに当時間違いなく世界トップクラスのCG映像だったFFMovieが公開されてから10年が立ちます。
今や日本のCG界での立ち位置たるや悲しいことにこんなもんですw
ここ10年の日本のCGを今振り返ると、悲しいことに空白の10年だった気すらしてしまいます。。。

これから何年かは、本当に本当に勝負の年だと思っています。
お互い頑張りましょう!!

突然お邪魔した上に長々失礼しました:P
またのぞきに来ます:)

tai さんのコメント...

すみません、ボタン連打したら重複しちゃったので1個消しました:P

失礼しました。

yu さんのコメント...

tai さん
コメントありがとうございます。
同じような危機感をもって、お話ができる方がいて、とてもうれしいです。

たしかにゲームの実機の可能性には目を見張るものがありますね。特にNvidiaのシーグラフのデモをみるたびに、僕らですらリアルタイムレンダーでいいんじゃないかと思うことがあります。

>空白の10年
たしかにそうかもしれませんね。CG業界も、日本経済全体と同じことがいえるのかもしれません。
しかし、今、いろんな企業が対応を初めていて、ここ数年が日本のCG業界の本当の勝負なのかなと思います。(ラストチャンスともいえるかもしれませんが。)

taiさんのおっしゃるとおり、個人のレベルでも同じグローバル化とCGの進化の波が襲ってきています。
アジア勢との競争と、もうひとつ、おそらくリニアワークフローを中心としたシステム化の波がそれで、
あと数年で一年目や学生がベテランとかわらない「リアルな」ものを作れる時代が来ると思います。

(GIが一般化しはじめたころ、急激に新人と中堅のレベルが縮まったことを思い出していただくとわかりやすいと思います)

そんな時代にどうやって職人として生き抜くか、僕も現在進行形で悩んでいるところです。お互いにがんばっていきましょう。

ぜひ、またご意見をお聞かせください。