2011年10月8日土曜日

CG会社の生き残る道 その2 工場化 まとめ

個人レベルだとどうすればいいか、を書いたところで、続きをかいてませんでした。


工業化によってCG業界がどうかわるか?についても考えていたのでそれもかくことにします。

を考察してみたいと思います。


そんな中、ぼーっとしてたら海外で活躍されているモデラーの北田さんがすでに、ひとつめの現象を的確にかかれていました。
北田栄二の海外武者修行!!【CG】 California visual effects firms facing a bleak landscape 続編

①サラリーの低下!!
これこそまさに工業化の弊害の代表的なものです。
単純に、今までのArtistから取替え可能な作業員になるので賃金は下がりますよね。
当然です。
そして工業化した会社では海外のArtistも入ってきやすいですから(現にPPIは海外のArtistが多いですよね)、彼らと日本国内のArtistは賃金競争をしないといけないわけです。

②海外企業がせめてくる!
また、海外企業の進出の問題もでてきます。

つまり、これによって工業化された企業が、日本の国内市場に向いたときに、国内CG市場のガラパゴス化がこわれれることになるからです。

ここは順を追って説明していきましょう。
現在、日本のCG市場は閉鎖された状況にあり、海外からの企業が入ってきづらいです。

なぜか?

発注側の思惑とCG会社の思惑にかなりのずれがあるからです。
これは僕がポストプロダクションにいたときに経験したことですが、監督や制作などはCG細かいことはあまりわかりません。
なので、つーかーで通じる相手を求めます。
「よくわかんないんだけど、こういうことしたいんだよ。細かいことはまかせる」
「わかりました!おまかせください!」

「できました」
「ぜんぜんちがうじゃないか!!」
こんなかんじですので、たいていはうまくいきません。
しかし、なれてくると、こういう指示でもだんだん発注側の好みがわかってくるので、
できちゃうのです。

そういう相思相愛の相手が一度みつかると、ずーっとその人にお願いすることになります。

これがすでに海外に対する障壁としてあります。
発注側がCGのことをよく知らないので、海外に発注すると、まずこの障壁にぶつかります。
ぜんぜん違うじゃん!と、
そしてそこで直してくれ!というと、
「じゃあ別料金で」
となるわけです。そうすると発注側としては、やっぱり海外はめんどくさいなあ、となります。
つまり商慣習の違いが障壁です。

しかし、日本国内に工場的な会社ができたらどうするでしょうか?
必然的にそういった企業とクライアントサイドが話をする機会がふえます。
最初は衝突を生むでしょうが、しだいにCGと制作サイドを通訳できる人がふえることになります。
つまり市場側、発注側が工業化されたCG企業との付き合い方を覚えるのです。
その結果、海外・特に中国・インドなどの企業が、コストというとてもわかりやすいアドバンテージをもって、日本市場に入ってきやすくなります。
結果的にさらに価格破壊が進んでいくでしょう。

つまり、鎖国が解かれると、外にも攻めることができるけど、逆に外から攻めてくる可能性がでてくるのです。

これが二つ目の現象です。

③働き方が変わる!

そして3つ目
これはすでにでていますが。
働き方の変容です。
大規模工場系の会社は基本的にサービス残業をさせることは難しいです。
まず、規模に伴う法律の問題。
大きな会社は、いろいろと守らなければならないことが多いからです。
さらに実務的な管理も難しい。
大規模なプロジェクトを管理するには、それぞれがばたばた倒れる状況だと管理することが難しくなります。
それよりも確実に進めるために分業し、ここの負担を減らすわけです。
そうすると、また分業により士気も低下しやすいので、いたずらにみんなをがんばらせても、能率があがるとはかぎりません。
「工場化→士気の低下」
これは、あまり声高に言う人はありませんが、歴史上あきらかですし、海外にいかれた方はよくこの問題にぶちあたるとお聞きします。
つまり、
「2012年やったけど、その水しぶきのシーンの白い白波の部分のパーティクルを出す仕事をしたよ。そりゃすっごーーいシーンなんだけど、おれがやったのはそのなかのほんと一部分だけつくってて、おもしろくない。」
というやつです

原理的に考えてみてもあきらかです。
職人さんと工場の作業員。どっちが自分の仕事にプライドをもってるでしょうか?
夜遅くまではたらくでしょうか?

もちろん、回避する方法はいくつか発見されています。
おおざっぱにいうと個々に、責任と誇りをもたせる。という方法です。
実践はむずかしいですが、多くの他業種の企業はそれに挑戦しているので、無茶な話ではないでしょう。
それにCG関係者は基本的に技術向上への熱意を持っている人が多いので、他業種よりも士気に関しては致命的な問題ではないかもしれません。

(工場をどう運営、改革していくか、という点に興味がおありのかたは↓の小説がおすすめです。)


つまり企業から見たら運営の仕方、そして働き手からみたら働き方がかわるわけです。

もちろん、採用の仕方もかわるでしょう。
優秀なアーティストが優秀な管理者とはかぎらないからです。
はじめから、管理サイドとアーティストサイドでわかれることになるかもしれませんね。

学生のみなさんは、そんなことも考えながら就職活動をしてみてはどうでしょうか。

--追記
そうだ!工場化べつに悪いわけじゃないですよ!メジャーなタイトルにかかわれますし、作業員ではなく、超ハイテク工場の研究員になれば、すごい楽しいと思います。(デジタルドメインではたいているTDのかたがたのように!)
最先端の技術を触り放題なのはそこだけですからね。

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