どうだっていいかな、そうなのかな、俺なんてどうだっていいな、田舎帰ろうかなと思ってましたが、男なら最後までやりとおすのだ、と甥っ子にいってしまったので、続きを書くことにしました。
一方で、デザインや研究も維持コストがかかります。
しかし、両者が必要とされるタイミングは、異なるのです。
まず研究し、デザインを決め、新技術・新デザイン・新商品を作る。
そしてそのあと本格発注があって、大量生産のフェーズに移ります。
その際に工場のラインは稼動をはじめる。
VFX産業的にいえば、大量のカットをさばきはじめるわけです。
これがタイミングの違いです。
うまくいっている際は、両者が次々に稼動します。
工場のラインが大量にカットをさばき、売り上げをバシバシあげている間に次の映画の(遊戯でもゲームでもいいですが)話が進み、プリプロ開発が進む。
そして一本大きな仕事が終わったところで次の仕事が大規模に動き出し、次のラインが進みだす。
これがうまくいっているときの仕事の流れになります。
一方、これがうまくいかないと、
「待ち」が生じます。
「待ち」が生じると、以下のようなデメリットが生じます。
①人的コストを無駄に消費する。
②それを避けようと専門外の仕事にアサインすると、分業化が進まず、作業スピードがあがらない。
どういうことか説明しましょう。
大抵のCGの仕事は最初結構暇なことが多いですよね。
そして締め切り間際はえらいことになる。
これを客観的にいうと、前半部分で無駄に人的コストを消費している、ということです。
また、逆にラインが回り始める後半、
デザインする人たちはけっこう暇になるので、違う業種にアサインされたりします。
具体的にはmatを描いたり、コンポしたりと。
得意な仕事じゃないことをするんですね。
これが日本でジェネラリストがもてはやされる原因でもあります。
いろんなところにはまりやすいので、使いやすいのです。
話を戻すと、このようなやり方では数ヶ月単位で違う仕事にアサインされるので、なかなか作業スピードが上昇しません。
同じことをやりつづけないと習熟度があがらず、作業スピードはなかなかあがらないのです。
(僕は仕事のたびに、毎回thinking particleを忘れ、チュートリアルをやり直します)
では、その原因である「待ち」をさけてみましょう。
以下のようなプロセスになります。
デザインが、しあがらない、新技術ができあがらない、
でも、まっててもしょうがないので大量生産フェーズに突入しよう。
もうわかりますね、ぐっちゃぐちゃですね。よくありますね。
じゃあ、なんで待ちが起こるのか?
原因を考えて見ましょう
なんでよく、「待ってる」の?
素材を作る人がいて、その素材を使う人がいて、
「まだかな?素材まだかな?」となっている。
これが待ちですよね。
ここで滞ってるなーというところをボトルネックと呼びます。
予定がうまくいかないことから待ちが生じます。
不確定な要素として、R&D作業が挙げられます。
たぶん、うまくいく、と思ってたことが上手くいかない、なんならソフトがプラグインが対応していない。自力で作ろうとしても、どのくらいかかるのかちょっとわからない。
こんなことがしょっちゅうあることがCGのR&Dといえます。
あとは、あがると思ってた外注の仕事が予定通りこない。あるいはきたとしても、仕様と違う。
このような不確定要素が「待ち」を作るのです
CGの仕事で、ボトルネックを潰すのは非常に大変です。
なぜなら、一点ものを作っている限り、ボトルネックが毎回変わるからです。
具体的な話をしましょう。
まず、毎回、監督が違うことが多いです。
多作すぎる監督じゃないかぎりは、一人の監督のVFXを回すため、ひとつのVFX会社ではまあ、持ちません。
監督が違うということはどういうことでしょうか、つまりOKを出す人が違うということです。
監督が違うと、現場が違うので、仕事ごとに力関係がかわります。プロデューサー、撮影監督、いろいろです。
OKを出す人が仕事ごとに違うということは、VFXを工場として考えれば、
仕事ごとにボトルネックが変わる可能性が大きくなるということです。
つまり、監督にみせてみないとわからない。
ということで、次の工程の人の待ちが生じます。
また、そこで覆ると、後ろの工程の人にうまくパズルをはめない限り、また待ちが生じます。
しかし、大きな目で見て、もっとも大きな待ちは受注のタイミングがうまくいかないことです。
つまり、大きな仕事は、受発注のタイミングが思った通りではない、ゆえに仕事がない人を抱えてしまう、ということです。
「待ち」の対策
よしわかったと、「待ち」が生じるのは、もうどうしようもない。
なるべく小さくする努力はするけれど、完全になくすのはあきらめましょう。
そのかわり、そのときに生じるコストを極小化しましょう。
どうするのか?
まず、ハリウッドの大手スタジオが取ってきた選択が、コアメンバーだけ残し、繁忙期だけ、フリーランスを雇いましょうという選択。
これを「忙しくなったら雇えばいいじゃん戦略」と呼びましょう。
この戦略が可能となる条件はなんでしょうか。
①フリーの人材がたくさんいること
②工場化が進んでいて、新しい人材がすぐに力が発揮出来ること。
③会社に労働力を管理するマネージメント力があること
④レイオフがしやすい
労働環境が流動的、社内教育環境がしっかりしている。マネジメントの層が厚く、優秀。
まさにアメリカの社会にぴったりの戦略といえましょう。
ちなみに、こういう会社で働きたいでしょうか?
働きたくない!もっと安心して働ける会社がいい!
artistのための会社を!!そう思った人が、作った会社がありました。
Rhythm and Hyuesです。
元社長のジョンヒューズさんは、「トロン」に携わったときの大変な経験から、Artistのための会社を作ろうということで、Rhythm and Hyuesを立ち上げたそうです。
実際、すごく働きやすい会社だったようです。しかし、そのためレイオフをなかなか行えず、常駐スタッフを抱えこむリスクを負ってしまいました。
そのスタッフを遊ばせないため大作をガンガン回さざるをえず、計算外の「待ち」が生じた結果、資金繰りがショートしてしまった。
(Rhythm and Huesは、一度倒産しましたが、民事再生法の下で運営を続けており、
現在は大作には手をださず、小さめの仕事を回して再建を続けているそうです)
ちなみに、これを日本に当てはめてみましょう。
①フリーの人材がたくさんいること
→いませんねー。
②工場化が進んでいて、新しい人材ですぐラインを回せること。
→なかなかここまで進んでいる会社は少ないのではないでしょうか。
③会社に労働力を管理するマネージメント力があること
→残念ながら、アメリカに比べて、かなり薄いです。そもそもアメリカのマネジメント層は地の優秀さが違うという話もありますが、それはおいといても、たくさんのフリーランスを管理するシステムというものに日本の会社は慣れていません。
④レイオフがしやすい
→無理ですね。これはぜんぜん無理。
「忙しくなったら雇えばいいじゃん戦略」、日本ではとても難しいこと、わかって頂けたでしょうか。
また、これは本場アメリカでも難しくなっています。
なぜなら、各国の映画補助金を目当てにいろんな国に支社をつくっているからです。
しかし、補助金というのは水物で、もっとも利益がえられる地域がコロコロかわります。それゆえ、いつ潰れるかわかりません。潰れたらその人材を別の支社にさくっと移動するわけにはいきません。なんせ国が違いますからね。
つまり、管理コストがどんどんあがっているんです。
そしてフリーの人材を集めることも難しくなっています。
それゆえ国をまたいで探しているわけです。
ハリウッドの大手はほんとに厳しい経営をしていると思います。
では、どうしましょうか?それが
この提案、
「ファブレススタジオかファブスタジオかを決めよう。」
となります。
R&D要素、デザイン要素と、ライン要素を完全に分離するのです。
そうすることで、別々に発注が進められるので、「待ち」が発生するときのコストを最小限に抑えます。
家電では、OEM生産というやり方がずいぶん昔から存在します。
デザイン、企画開発、ブランド、他社の製品を製造することです。
例えば、Appleです。Appleは工場はもっていません。
Appleがやるのはiphoneを企画し、デザインし、型をつくり、なんなら製作するための機械を提供する。技術指導だってしたりします。
しかし、実際に工場を所有し、人を集め、iphoneをしているのは、世界最大の企業グループ
Foxcconです(一社ではありませんが)。
これがOEM生産です。大量生産する会社と企画、デザインする会社が違う。
はい、突然iphoneの話をしてなにいってるんでしょうか、というかんじですね。
CGの話に戻しましょう。
CGでいうOEMとは何でしょうか?
AssetそしてRandDですね。
僕が提案していることはこういうことです。
研究する人、Assetを作る人、使う人で会社を分けるのです。
海外では、この2分化は進むでしょう。
既に同じ会社でも、アメリカ国内の本社、国外の支社、みたいな形で今この2分化が進んでいますね。
アメリカ国内に研究機関を残し、国外の支社で大量雇用を抱える、という形です。
これはもっと進んで別会社になっていくと思います。
また、RandDの分野ではすごくニッチな分野、例えばイメージスキャニングやイメージモーションキャプチャーはそれ専門の小さな会社が担っています。
こうしたニッチな分野を社内に持つことはコストが高いんです。
大手が倒れて放出された研究者たちが、こうしたニッチな分野でタケノコのように小さな会社を作っていくことが起こると思います。
日本でこの二分化がやれるかどうかはバジェットにかかっています。
映画の仕事でも邦画だと低予算のため、そもそもRandDなんてしないよ。という仕事も多いわけです。
とはいえ、嬉しいことに、徐々に邦画でもRandDが必要な大作もふえてきましたね。
そういうときにどうするか、
なんでも自社でやるんじゃなくて
Assetを作ってくれる方にまかせるのですよ!
これがファブレススタジオとファブスタジオをわけようという提言の趣旨になるわけです。
現状でも、HDR関係でいえば、亀村氏のLogoScope社、エフェクトでいえば、米岡氏のStealthWorks社など、RandDに特化した小さめの会社がありますね。
こういう会社がこれからも増えてくるでしょう。
おいしいところをとられちゃうよ。と思う人は、Foxcconの利益額と力の源泉をよく考えて見ましょう。
Foxcconは人のマネジメント、教育に特化しているといえます。
そして、世界最大の企業集団になっているわけです。
あなたの会社、開発が得意なの?人のマネジメントが得意なの?どっちなの?
どっちもいけるの?
そういうことです。